Reported by : ゲイル・スティーバー ‥‥ END ‥‥
UPDATE - '08.04.27
【 MTV 10周年記念番組 '91 】
= 録画会場現場レポート =
( VOL.38-39 / Nov 1991 - Jan 1992 )
私は、是非この体験を、日本のマイケル・ファン『MOONWALK』の皆さんと分かち合いたかったので、これを書きました。
■11月12日(火)■
私たちは、録画撮りのことと そこへ招待されること・そして誰か友人を1人連れて来ても良いということが書かれた手紙を受け取った。
私は参加者名簿のリストに加えられたのだ!
すぐに友人に電話をした。
録画撮りが行なわれるサンタモニカ空港まで乗せて行ってくれるバスがサンタモニカ・ビーチで待っているので、そこへ行くようにと私たちは指示を受けた。
■11月15日(金)■
金曜の夜、私と友人はビーチへ車を走らせた。
着いてみると8台の大型バスが来ていて、参加する人たち約300人程がバスに乗り込むため列を作って待っていて、私たちは1時間以上もその列に並んでいた。
そして空港へ出発する時間ギリギリにやっとバスに乗れたのだ。
録画が行なわれる空港の格納庫へ到着し、そこでこれから何が行なわれるのかについての説明を受けた。(つまり、観客としてビデオに参加するのだという説明を受けたのだ)
私たちが入場チェックを受けるために格納庫の外でしばらく待たされている間に、ライティングやセットをいろいろと調整していた。
リハーサル風景
最後のチェックを受け、いよいよ格納庫へ入って行くと、そこはステージと化していて、ステージの一方には「BLACK」・もう一方には「WHITE」と書かれた大きなカーテンがあり、中央にはいろいろな色を使い様々な絵が描かれている古い車が置かれていた。
私たちは、格納庫へ入場した後もさらに待った。
盛り上がって熱くなっている私たち観衆の前へ、やっと Pauly Shore(MTVの人)が歩み出てきた。彼はとても面白い人だった。
それからマイケルの振付師である Vince Pattersonが出てきて観客に話をした。皆さんは、彼がBADツアーや『The Way You Make Me Feel』を振り付けした人だったことを覚えているだろうか?
いよいよライトが薄暗くされ、ステージ中央の車の屋根の上に、ファンにはお馴染みのマイケルのシルエットを見つけた。
彼は5~6人のダンサーに囲まれていたのだ。
『Black or White』の1回目の録画は、口パクで通して行なった。
マイケルとギタリストのスラッシュは、ビデオの各箇所全てをひと通りやってみて、それを2度行なった。
そして、いよいよ彼らは私たちの目の前で、生でパフォーマンスしてくれたのだ!
それは、サミー・デイビスJr.の記念番組以来の初めてのライブパフォーマンスをマイケル自身が満喫しているかのように見える。すごくエキサイティングでエレクトリックで、素晴らしいものだった。
私は、このパフォーマンスを素晴らしいものにするための観客役として参加できた事を、とても光栄に思った。1989年初めからの彼のパフォーマンス全て・そしてLAでのBADツアーのラストコンサート時も、ずっとその場に居たし、本当に幸運なことだと思っている。
録画撮りが終わった後、私は友人であるビル・ブレイ氏が格納庫を横切っていくのを見つけ、彼に話しかけに行った。
ビルは、いつもと変わらぬ素晴らしい人柄だった。ビルはこの『Black or White』のビデオ(ファン達の強い希望で観衆を含めての録画編集にマイケルが踏み切ったビデオ)の、ファン達の反応にびっくりしたと言ってくれた。
私たちはバスへと戻り、続いてMTVの人がバスに乗り込んで来て、「2本目のビデオ撮りのため、明日の夜もう一度ここへ来て欲しい」との説明があった。
私たちは、2曲目もまたしっかり生で観れるんだ!と大喜びした。
■11月16日(土)■
土曜の夜、昨日と同じ手続きを踏んで、私たちは空港へ戻って来た。
この夜マイケルは、『Will You Be There』をパフォームした。この曲は、バックにゴスペル調の聖歌隊を従えた曲だ。(アルバムでは Andre Crouchシンガーズがバックをやっている)
視覚的な演出は、「神が“たとえ何が起きようとも私は(神は)あなたのそばにいつも居ますよ”と僕に語っているのだ」というマイケルの詞を表現したものだった。
ビデオ中には、信心深さの証がとても興味深く表わされている。
中盤のダンスでは、地球や聖書が次々と扱われている。
ビデオの終盤では天使が天から降りてきて、その翼でマイケルを包み込む。
そのダンスは、私たちが今まで観たこともないような… 彼のダンスの中でも最高のものだった。『MOTOWN 25』や BADツアーよりもであり、さらに今までのもの全てを一緒にしたものよりも、もっともっと素晴らしかったのだ。
このニュービデオから、ファン達は素晴らしいものを受け止めるはずである。
私が文章で描写できる唯一の点は、いつものマイケルのダンスにクラシカルダンスの影響を受けたダンスを加えたものだ、ということだ。そのダンスには、モダン・ダンスを思い起こさせるようないくつものシーンがあり、モダン・ダンスの断片を散りばめたという感じだ。
中盤では、特別美しいダンスが次々と展開された。
そのシーンのリハーサルでのお話。
2人の男がマイケルを空中高くまっすぐに持ち上げる。
何回も何回も彼らはこの動作をやり直した。
というのも、2人の男の息が合わず、どちらかがいつもタイミングがずれていたり、あるいはマイケルが少しずれた位置に居たからだ。
本番として5回もやりましたが全てうまく行かず、とうとうディレクターは中止しようかと考えた。他の出演者たちは、自分たちの振付(手話に似たボディランゲージのような踊り)をマスターすることに夢中になっていた。
そんな状況の中でマイケルは、ディレクターに何やら耳打ちした。
それから連続ダンスシーンに入るちょうど前の部分からもう一度やり直そうということで、みんな位置についた。
今度は、2人の男はマイケルを上手に持ち上げたように見えたのだが、結果はひどい出来だったのだ。マイケルの顔は苦痛を我慢した為と またもやの失敗で、信じられないぐらい表情を歪めた。
みるみるうちにマイケルは(我慢の限界が来たように)気分を落とし、他のダンサーやいろいろな人に注意を与え始め、何回も念を押すようにその注意を繰り返していた。
次の回は、そこで観ていた私の目にはマイケルの表情も良くうまく行ったと思えた。しかしマイケルを満足させるまでには、あと2回繰り返されたのだった。
3回目のテイクは、途中でNGも出ずそのまま止まらずに終わりまで続けて行なわれた。それは素晴らしい出来で、たとえ誰かがちょっと失敗して「私がやりました!」と名乗り出ても許してしまうのではないかと思えるほど、マイケルは一番晴れやかな笑顔になっていた。
観客役たちの表情にも笑顔が戻り、マイケルの喜びを共有して拍手を力いっぱい送った。
彼らはとうとうやり遂げたのだ!
この録画現場には正真正銘のファンはわずかで、他は企業関係者やファン以外の人が多かったようだ。
だからこそ、素晴らしいリアクションが収められたのだ。
誰もが、彼のダンスと歌の美しさ・素晴らしさに、本当に口もきけなかった。
MTVがマドンナの出演を差し留めたという話を聞いた後で、マイケルがこの仕事をすることは彼にとってはとても楽だったと聞いたのは、とても愉快なことだった。
このショウから彼女の出演がカットされた主な理由というのは、彼女はMTVの予算をあまりにも多く使いすぎるのと、共演させるにはとても気難しく扱いにくいといったものだった。
彼女は、歌う代わりにとても薄っぺらな内容のひとり語り(マドンナ自身の語り)を使い、こういう事は非常にばかげたことと思われた。
それに比べるとマイケルは、MTVの意向に沿いながら気軽に仕事をしたのだが、経費は莫大なものだった。
しかしマイケルの場合は、ビデオ撮りに大金を費やすことはよくあるけれども、同時に彼はその中で力いっぱい演じていることも私は知っている。
その莫大な経費をMTVがマイケルに支払った時、マイケルはその理解に対して心から敬意を払ったのだった。
私は幸運にも直にその現場を観ることが出来たわけですが、マイケルが完璧主義者だということを改めて認識したのだった。
■11月17日(日)■
次の日、ラジオではアルバムからの曲を流し始めた。
私たちは『Heal the World』・『Keep the Faith』・『Dangerous』・『In the Closet』・『JAM』・『She Drives Me Wild』を聴いた。
どれもこれもみんな素晴らしかった!
全てがNo.1ヒットの曲だ。
こんなにも凄いことをするなんて!!
この4年3ケ月の間に、マイケルはどのような新しい出逢いがあったのでしょう。
どんな経験を重ねたのでしょう。
どれほどの時間 思考したのでしょう。
グラミーでのパフォーマンスで、マイケルは さぁ立ち上がろう・さぁみんなで、と叫びました。
歌詞はまだなお薄いオブラートに包まれているようではあったけれど、
マイケルが体で叫ぶ姿に感動されられました。
今回、変わらぬ一貫した訴えかけがあるものの、
なんて彼はそれを相手を見つめながら話しかけられるようになったことか!
余裕をもったその静かな訴えかけは、前回私たちを感動させた叫びよりも力強く
心を動かされずにはいられません。
心が洗われるようなメロディーにまず驚かされ、次にオブラートを取り去った歌詞に
別の驚きを与えられます。
その言葉は、自信に基づいた力強さと厳しさで、真正面から問いかけてくるようでもあります。
これから会報誌上でも、皆でマイケルからのメッセージを
1つ1つ受け止めて行きたいですね。