カンヌ映画祭・GHOSTSプレミア体験レポート
【 De Cannes 】
( VOL.95 / Jun 1997 )
50周年を迎えたカンヌ映画祭。
今年はそこでマイケルのGHOSTSプレミアも予定されていて、
インターネット上で入場チケットプレゼント企画に応募したクラブ会員のcaptainさん。
しかし「どうせ当たりっこない」と忘れていたある日、
人から当たっていることを教えられたのはプレミア1日前…
ファン友達の頼もしい協力と、その気になれば何とかなってしまった体験レポートです。


Reported by : captain


 (1997年)5月6日の23時に、カンヌのチケットが当たっていた事を電話で聞いた。

 「支度してる?」と訊かれて、「え? カンヌなんて行カンヌ(このダジャレ受けたかな?)」と思った。
 聞くところによると、なんとチケットが当選しているという。何を冗談を…と思ったが本当だったので、ビックリしているどころではなくなってしまった。

 それからというもの、私は興奮のあまり 何をしていいのか、何をするべきなのか、何を考えるべきなのか全く判らなかった。 ただ「どうしよう…」と口走るばかり。 こんなに「どうしよう」という言葉を言ったのは生まれて初めてだった。 しかしどうしようと言いつつ行こうとしている私がいた。
 が、すでに5月7日をまわっていた。GHOSTSプレミアは5月8日なのに。
 ああフランスってなんて遠いんだろう…


 しかしパニックに陥っていた私を助けてくれたのが同じ強烈なファンキーマイコーファン達だった。彼女たちは私に的確にアドバイスを施してくれた。彼女たちの興奮も電話で私に充分過ぎるぐらい伝わった。
 夜中のうちに私たちは一睡もせず、出来る限りの事をした。こんな夜中に開いている店などは無く、飛行機のチケットの事だけが問題となった。友達に連絡、身支度、飛行機チケットの手配、国際電話、FAX、連絡の電話… 夜を徹して全力を尽くした。
 そんなことをしているうちにすぐ陽は昇った。

 友達はすでに東京行きの飛行機に乗っていた。その間に私は飛行機の問題を解決しなければならなかった。ここで飛行機に乗れなかったら全てが終わりだ。
 ものすごいスピードであらゆる所へ連絡し続けた。まだ開いていない所へも。
 友達もようやく東京へ着いたようだった。だけどまだチケットが取れない。
 7日の昼過ぎにやっとカンヌ行きの飛行機をつかまえた。
 行ける!
 まだ、支払いや欠勤、その他多くの問題を抱えていたけれど、もうそれどころではなくなっていた。

 その日の夜の便で私たちはバッグ1つでカンヌへ飛んだ。
 機内ではグッタリする間もなくマイコー宛の手紙、プレゼントを作成した。気分は最高に舞い上がっていた。
 パリで乗り換えてニースに向かった。



 ニースに到着!
 うそっ! ホントに来ちゃったよ。
 すぐにタクシーに乗ってマイコーのいるホテルへ直行だ!この美しい景色を眺めながら、なんて考えていたが、130キロで走るタクシーからは流れる横線しか見えなかった。 き、き、気持ち悪い…
 なんだ全然混んでないじゃん。ポスターもないし、看板もないし。おかしいな。

 30分位走ってようやく賑やかになってきた。
 WOW! WOW! WOW! Cannes!! 赤いカンヌの旗の列に着飾った男女がいっぱい!! うわ~! すご~~いいいっ!!
 あっという間に人だかりの中。車は渋滞。周りは人だらけ。
 突然右側に、見たことのある赤い絨毯の階段! ここはもしや! そう、ここがシアターだ。TVではよく見るこの感じは、まさしくカンヌ映画祭じゃないか。
 ここここをママママイコーが… キャー。 私たちはタクシーの窓にへばり付いた。

 シアターからすぐの所がカールトンホテル、マイコーのホテルだった。
 そこはものすごい数のマイコーファンが既にコールを始めていた。
 マイコーはカールトンへ真っ赤なターバンを巻きサングラスして入ったらしく、「今のはマイケル?」「にせもの?」と混乱していると、すかさずバルコニーからにこやかに手を振っていたという。



 私たちはまずホテルに潜入。
 ラッフルズばりの白く輝くゴージャスなホテル、海岸に面した超豪華ホテル。



下段はマイケル宿泊の部屋


 1階には映画祭のプログラムやパンフがたっくさん。その中にGHOSTS発見! だけどゴースト達の写真ばかりで肝心のマイコーがいなかった。おいおい!

 チケットを受け取るために外のバーに向かった。
 バーにはまだチケットを手渡してくれる係の彼女がいなかった。チケットの受け取り時間を過ぎているのに、なかなかチケットが貰えずにファンはヤキモキしていた。
 その間もマイコーコールが止むことはなかった。何千人というファンが正面で叫んでいた。その様子を各国のカメラマンが捉えていた。
 バーではマイコーのニューシングル "Blood On The Dance Floor" が流れ、マイコー似の彼がダンスを始めた。そこへ女の子も飛び込んでダンス。
 もう皆の興奮は尋常ではなかった。マイコーが顔を出すに違いない! しかし彼は出て来なかった。
 他の俳優のファンは一体どこにいたんだろう? ホテルはマイコーファンに囲まれていた。
 マイコーのTシャツ、マイコーの帽子、バナー、写真を持ったファンが右や左に移動していた。私たちのハワイで買ったGHOSTS Tシャツも人気だった。マイコーの垂れ幕も最高の演出をしてくれた。

 と、突然マイコーが右端の7階バルコニーに現れた!!
 なんと彼はピンクの小さな花束(バラ?)を持っていた。ファンにそれを差し出すかのように手を伸ばし笑って大きく手を振った。赤いシャツが白いバルコニーによく映えた。
 何回も何回も彼はファンに手を振ってみせた。
 ファンは、「Mike! We love you 」を繰り返し、死にそうな悲鳴が飛び交った。
 警備員に押されたファンだったが、私たちにはもうマイコーしか見えなかった。
 彼が引っ込んでからもファンはそこに留まった。

 その後マイコーは、映画関係のテープやポスターを売っている店へ買物にお出掛け。
 そして戻ってきて再び顔を出した。今度は黒の帽子に黒のシャツ。またもやファンに手を振ってくれた。



 結局チケットを手にしたのは午後6時すぎになってしまった。
 各国からのファンと盛り上がってホテル内のTVを観た。観たことのないGHOSTSの映像が流された。

 その頃にはもうホテルの警備が厳重になっていて、宿泊者以外は入れないようになっていた。
 その後私たちは自分たちのホテルを取りにそこらじゅうを走り回り、やっとのことでホテルを取った。この時期によく取れたと思う。
 早速ドレスにお着替え。


 GHOSTSは、この日8日のミッドナイト0時半からカンヌ一番のメインホール "パレ・オーディトリアム" で特別上映される。
 シアターには驚くばかりの人波が! 彼らはみんなマイコーを待っている!
 シアターの左側に大きなスクリーンがあり、到着したスター達が階段を上がるところを映し出している。
 ここでGHOSTSのプログラムを購入。
 すごいカッコイイ!! 写真がピカピカ!! プログラムは4千部限定! ホントにかっこいいんでモウたまりませんって。

 マイコー到着の前に赤い絨毯が新しく替えられたようだったが、私には人の頭しか見えませんでした。
 マイコーは、会場まで徒歩5分のホテルから4台の白バイに先導され、15分遅れで到着。
 マイコー到着のアナウンスが流れ、そこにいた人たちはドッと身を乗り出し叫びまくった。
 マイコーはリズのチャリティ・ガラの時のジャケットで黒のパンツ。サングラスもマスクも無し。押し寄せる報道陣とファンの中を笑顔で手を振りながら階段を上がっていった。


 GHOSTSは "Is It Scary" が付け加えられ、日本で上映されたものとは多少違っていたような気もする。
 シアター内ではマイコーの曲が流され、マイコー到着のフランス語のアナウンスによって迎えられた。彼は手を振り、握手をし、サインをした。


日本の試写会では "2bad"インストゥルメンタル・アレンジが村長ダンスシーンのBGM。
村長のスーパーグール変身シーンCGも製品化までに数回改変された



ご夫人はウィンストン監督にもキャンディを回すべきか逡巡されているご様子


 約40分の上映の後、彼は再び赤い絨毯を手を振りながら歩いた。
 バンにはファンが群がり、走るというよりファンに押されているかのように見えた。
 バンに乗る前、マイコーはファンが持っていた赤ちゃんの写真付きのバナーを指差し、それを受け取った。


 シアターからホテルまでは5分もかからないはずが、20分はかかった。 ホテルまでファンがずっと囲んでいた。やっとホテルに到着したけれど、あまりのファンと報道陣の数でなかなか出て来られない状態だった。 バンの前ではケンカが始まりそうになっていた。
 ぎゅうぎゅう詰めになって苦しんでいる最中、私は痴漢に遭った。 こんな生きるか死ぬかの騒ぎの中で思いっきり触ってくる人に私は叫んだ。勿論この騒ぎの中で誰も気づきはしない。
 そして痴漢を撃退している間にマイコーはホテルに滑り込んだ。
 うっそ――っぅぅぅ! 何ィ――?
 もう怒りと悲しさが込み上げてきて何とも言えなかった。

 マイコーがホテルに入った後も騒ぎは収まらなかった。
 はぐれた友達をやっとのことで見つけ出し、再びカールトンホテルに入った。
 もう真夜中を過ぎていたので、それ以降マイコーは顔を出さなかった。出したかもしれないけれど、私たちは1~2発マイコーコールをしてからボロボロになって自分たちのホテルに戻った。髪はボサボサ、靴は脱げるし大変だった。

 夜中もTVではマイコーが手を振る様子やシアター到着のニュースを何回も何回も流していた。
 本作品でもないのに、マイコーが完全に主役だったことは誰もが知っていた。
 カンヌはマイコー一色になっていた。

 明朝6時に彼はパリへ発った。 早いって! マイコ~~。

 パリのバスの中で "Superfly Sister" を聴いた。歌をプレゼントしてくれてありがとうマイコー!!
 帰りの飛行機の中で私たちは泣き、笑い、死んだように眠った。

 最後に、カンヌ行きにあたり協力して下さった方々、本当にありがとうございます。みんなありがとう。

・・・ END ・・・

UPDATE - '08.06.16