【 Making of "Remember The Time" 】
(JET誌 '92年2月17日号より)
( VOL.43 / May 1992 )


 古き良き時代のハリウッドの聖書的な世界。
 マイケルは、ニュービデオ "Remember The Time" のために古代エジプトを選んだ。全編そのアップビートな歌が流れ、黒人が文明国を統治していた時代を呼び戻したのだ。
 「映画屋が古代エジプトを撮ろうとする時、たいてい大スペクタクルにするだろ? 奴らは何も描いていないし、真実を見せてないよ。 奴らは美しい黒人を描いていない。 マイケルは、俺たちに描いて見せたかったんだ。俺たちは素晴らしく美しいって事を。」
と言うのは、"ボーイズ・ン・ザ・フッド" の監督ジョン・シングルトン。

 シングルトンとマイケルは、撮影前にテーマの話し合い・キャスティングに数週間をかけ、先月('92年1月)に1週間弱で撮影した。





 シングルトンは、ずっと以前からマイケルのファンだった。
 「俺からマイケルへ電話したんだ。 "俺にショートフィルムを撮って欲しくないかい" って。 "俺は役に立つぜ" って。 次のシングル "Remember The Time" が発売されるんで監督を探していたところだったそうだよ。」
 「まず、誰にファラオ・ラメス(王)が出来るか・誰に俺たちの求めるユーモアある演技が出来るか検討した。 俺が "エディ・マーフィーは駄目かい?" って言うと、マイケルは "そうだね!" って。 マイケルがエディに電話して、"出演を依頼したいから会いたい" って言ったら、エディは "Yes" って答えたよ。」
 「それから俺たちは、女王ネフェルティティを出来るきれいな女性を探した。 マイケルは言った。 "ねぇ、僕が誰を美しいって思ってるか判るかい?"。 俺たちは互いの顔を見合わせ、同時に言ったよ。 "イマン!" ってね。 以心伝心ってのは、まさにこの事さ。」

 マイケルとシングルトンは、娯楽性とともに教育性もこのショートフィルムに持たせたかったのだと言っている。
 「俺たちは、先祖を誇りに思っているんだ。」


 ダンスの振付師は、ホイットニー・ヒューストン、スティービー・ワンダー、キース・スウェットなどを手がけたファティマ。
 「"マイケルはヒップホップなダンスを求めている" ってジョンが言ったので、全てをヒップホップにしたの。 ヒップホップはエアロビクスの一種ね。全編を通じて、私たちのルーツのアフリカのイメージでやったわ。マイケルには私たち(群舞)よりも高度なダンスを。私たちのはエジプト・スタイルで、尚かつストリートなものを。つまり、テクノホップね。」
 「今回のダンスはマイケルにとって新しいスタイルだったけど、マイケルはすごいわ。楽々とステップをこなしてしまうんですもの。」
 「マイケルにとっても、素晴らしいひとときだったと思うわ。私たちは2週間毎日5~6時間リハーサルをしたけど、とても楽しかった。黒人の歴史のビデオが創れてとても幸せだった。」



 "Remember The Time" を作曲したのは、マイケル、共作者のテディ・ライリー、バーナード・ベル。 7週連続1位を獲得した "Black or White" に続いて発売される。
 アルバム "DANGEROUS" は、発売以来トップか上位をずっとキープしている。

 詳しい数字は発表されていないが、 "Remember The Time" のセットには惜しみなく金がかけられ、しっかりとしたものが造られた。噂では約200万ドルかかったという。


セットもCGも手抜きなしの分、逆に仰々しい無駄な華美感は感じられない


 シングルトンによれば、マイケルは "ビデオ" ではなく "ショートフィルム" を創ったのだそう。
 シングルトンは、南カリフォルニア大学の学生だった頃にショートフィルム(短編映画)を撮ったことがあるが、プロになってからはこれが最初となった。

・・・ END ・・・

UPDATE - '07.11.02