TV GUIDE誌 インタビュー 】
― THE ONCE AND FUTURE KING ―
( Dec. 4-10 1999 )
( VOL.111 / Feb 2000 )

 『THRILLER』 で業界の記録を打ち破り、この10年間ポップス・ミュージック界に君臨し続けたマイケル・ジャクソン。
 彼との独占インタビューを通じて、これまでの音楽史における彼の立場や私生活の問題,そして今後に向けての抱負などについて語ってもらった。

= リサ・バーナード =

 彼にまつわる伝説はあまりにも多すぎるものの、だからといって それらは彼の魅力を損ねるものにはならない。
 タブロイド紙の見出しを飾ることで しばしば計り知れないほど多才な才能の蔭を薄くしてしまうような、そんなマイケル・ジャクソンという存在はいったい何なのか?

 元ジャクソン5のリード・ボーカルは、1982年のアルバム『THRILLER』で、ソロとしての地位を不動のものにした。
 1993年に性的虐待を理由に13歳の少年から彼に対して訴えが提出され(非公式に秘密裏に金を支払ったという話については、マイケル側は猛烈に否定している)、その事で彼の輝かしいイメージはひどく低下してしまった。それでも彼は前へと突き進んでいる。

 ニューヨーク・シティ・ホテルのスイートルームで腰掛けながら 悪名高きシャイなポップスターは、(いつもの事ながら)カリスマ的な雰囲気をたたえ、うきうきしながら今後予定の計画について語るのである。
 その話は、彼の兄弟たちと再共演しそうなタイトル未決定のCDアルバムの事へも及んだ。(マイケルいわく「ハッピーなダンス・ミュージックで、人間の繋がりを題材にしたもの」。)
 また、『エドガー・アラン・ポーの悪夢』という本を書いた19世紀の作家を非常に気に入っているようだ。そして彼は、来年に向けての映画の撮影を進行中であることも語っている。
 つまり、ポーの「人生は実に興味深いものだ」,そして皮肉を込めて付け加えられた言葉「私は人生を危なげに演じているアーティストを愛する」という意味を、まさに実践しようとしているかのようである。

―― … リサ・バーナード    MJ … マイケル

―― "Thriller" のビデオは、それまでのミュージックビデオの在り方を一変させてしまいましたね。
アイデアはどうやって浮かんだのですか?
MJ 兄のジャッキーが うちに来た時に、
 「このテレビ番組知ってる? ずっと音楽を流してるんだ。 MTVっていうんだよ」
って教えてくれたんで、観てみたんだ。
コンセプトはとても面白かったけど、イメージ画像のビデオなんてのは好みじゃなかった。
もし僕がやるんなら、ショートフィルム(※短編映画)のような起承転結があるものを創るのにな、って思ったよ。
―― あなたは、自分のアルバムからのビデオや 『THRILLER』 が、あんなにも世間を騒がすものになると想像していましたか?
MJ アルバムがあんな事になるなんて、本当に思わなかったよ。
僕はただ、観て面白いものを創りたかっただけなんだ。
"Thriller" のビデオの目的は、恐怖・楽しみ・興奮なんだよ。


―― あの頃を振り返って、どう思いますか?
MJ うん、幸せな時期でもあったし、つらい時期でもあった。
そしてエキサイティングな時期だったね。 たくさんの夢が叶ったんだし。 評判も上々だったしね。
―― 「つらい時期」 とおっしゃいましたね。
MJ うん。
やろうと思った事が思うように出来なかったから、とてもがっくりしたよ。
―― アルバムがまだ思いどおりのものでは無かったという事ですか?
MJ 完璧じゃないんだ。
―― どの曲がそうなんですか?
MJ "Wanna Be Startin' Somethin'" だよ。
曲を創るっていう事はね、とても欲求不満が溜まるんだ。
頭で思い描いている音楽を、正確にテープに落とさなければならない。 ここ(自分の頭を指さして)で鳴っている曲は、それはもう素晴らしいんだよ。 それを具現化して、テープに録音しなくちゃならないんだから。
"The Girl Is Mine" は、完璧ではないけど とてもよく出来たよ。
"Billie Jean" に関しては、特別に頑張った。 ベースだけで3週間もかけたんだ。
―― 手袋・白い靴下・赤のレザージャケットなんかは、誰の提案なのですか?
MJ 手袋は… 両手より片手の方がカッコイイと思ったんだ。
動きにアクセントがあるのって良いよ。 視線は白に行くだろ? ね、手袋にさ。
で、足にライトが当たっていたら、足の動きがポイントになるだろ。 だから白い靴下を履いたんだ。
ジャケットのデザインは、衣装係の人に、ボタンやバックルの位置やデザインを指示したんだよ。
【※追記- "Thriller"ジャケットのデザイナーは、そのビデオ監督ジョン・ランディスの妻であるデボラ・ナドゥールマン・ランディスさん】
だけど、もうそういう格好はしないことにしたんだ。 過去に固執するのは淋しいしね。
だから家にはトロフィーとか置かないよ。 ゴールドレコードやグラミーなんかもね。 保管してある。 思い上がりは好まないし。 もう獲るものが無いなんてね。 そうじゃないから。


―― ご自身の最もクリエイティブな時期は、もう過ぎたと思いますか?
MJ まだ最高の仕事があると思う。
だけど、ポップアルバム創りではない他のことにも挑戦したいんだ。
―― 音楽的に興味のあることをしているアーティストはいますか?
MJ いくつか素晴らしいアイデアはあるようだけど、誰も目新しいことはやっていないと思うよ。
大体において彼らは、古いものを持ってきて 新しいものに混ぜる作業をしているんだ。
―― 一緒に仕事をしたい人はいますか?
MJ 尊敬している人はたくさんいるよ。
けど一緒にとなると、別にいないかな。
―― 好きな音楽は何ですか?
MJ びっくりするよ。 今朝、ロジャース&ハマースタイン歌ってたんだ。
家にいる時はそういった曲を歌ってるよ。 『サウンド・オブ・ミュージック』 の "My Favorite Things",バーブラ・ストライザンドの "Absent Minded Me" とかね。
それに、昔の偉大なMGMミュージカルのファンなんだ。 ショウの曲が好きだな。 ああいったメロディが大好きなんだ。


―― 何をパフォーマンスするのが好きですか?
MJ "Billie Jean"。
同じように演じる必要はないとは思うんだけど、皆はいつものが観たいんだよね。 僕はあそこでムーンウォークしなくっちゃ。(笑)
だけど、本当は違うかたちで演りたいんだよね。
―― こんにちのあなたの観客は誰ですか?
MJ わからない。
僕としては ただ、素晴らしい音楽を書こうとしているだけ。 そして皆が気に入れば、彼らはその曲を好きになってくれるんだろうね。
僕は、どんな統計も考えないんだ。 だけどレコード会社は、僕にそれを考えてほしいんだ。 売れるものをね。
だけど僕は、楽しく聴けるものを創りたいだけなんだよ。
―― 新ミレニアムには新マイケルを観られますか?
MJ うん。 いくつか計画があるよ。 今までのものとは全く違うものだよ。
ニューアルバムの中に "I Have This Dream" って曲があるんだ。 キャロル・ベイヤー・セイガーと デヴィッド・フォスターとの共作で、世界と環境のミレニアムソングになっているよ。
【※追記- 一般から歌詞を募集し、それで歌入れもされたと思われるが、結局は収録されず】
―― またツアーをしますか?
MJ 考えてないな。 長い期間かかるからね。


―― 外出時に変装しますが、何故ですか?
MJ 他に方法が無いからさ。
いろいろしたよ(笑)。 太った格好・尼僧・ピエロ。
ハロウィンが一番だったよ。 カーニバルもね。
―― あなた自身,つまりマイケルとして歩き回れるようになると思いますか?
MJ 僕は、違う理由で変装するんだ。
壁のハエのようになって 人を見ているのが好きなんだ。 それがたとえ、ベンチに座る2人の老女や ブランコで遊ぶ何人かの子供だろうとね。
何故なら僕は、日常生活をどうしたら良いか判らないから。
一度、完璧に変装してレコードショップへ行ってみたんだ。 何人かの女の子たちが、僕のアルバムを手に取っておしゃべりしていたよ。 本人が隣にいたのに! それがとても面白かったし、そういうのが好きなんだ。
だけど、僕自身で外出しても、楽しめないんだ。
いつも、皆が 「パーティに行こうよ」って言ってくれる。 でも僕が参加したら その瞬間、僕にとってのパーティは終わり。 彼らにとってのパーティになるから。
彼らは名刺を出し、「憶えていますか? 4年前に会いました…」
僕はこう答える。 「憶えていません」。
そんな風だから、その場を楽しめないんだ。
皆、僕の曲を流し始める。 僕は自分の音楽を聴きに来たわけじゃないのに。
そして誰もが言い出すセリフ、「踊って!」。 う~ん、たまには君たちのダンスが見たいもんだよ。


―― あなたには批判的な報道が多いけど、人々はあなたの音楽であなた自身を判断してくれると思いますか?
MJ そうは思わないよ。
だってマスコミが僕を怪物・狂人・奇人変人に仕立て上げてしまったんだから。
僕はそんなんじゃないのに。
―― そのような印象を変えるために、ご自身で何か出来ることはありますか?
MJ うーん、僕自身でいること・自分を表現すること、かな。
だけど彼らは、それにすら手を加えるんだ。
―― 「彼は変人で、自宅に風変わりな動物を飼っている」…と言う人には?
MJ 神が動物を創ったんだ。 彼らは素敵だし、美しい。
人類学者ジェーン・グドールや 自然科学者たちと通じるものが僕にはあるんだ。 動物への興味が異様で奇妙だなんて思わないよ。
―― 整形手術については?
MJ ハリウッドでは誰もがやっているよ!
彼らは、なぜ僕だけを指さすのか解らない。 記者たちは大袈裟に言うんだから、鼻のことを。 彼らは、僕が全てを整形したと言いたいんだ。 鼻だけじゃ充分じゃなくてね。
エルヴィスだって鼻を整形したよね? リサが言ってたよ。 彼らはそれに関しては何も言わないのに、僕だけだなんて。 フェアじゃないよ。


―― そうですね。
では、リサ・マリーの話が出たところで…。
彼女は、あなたとの子供が持てなくて がっくりしてるって。 そして、あなたとの子供を今でも欲しがっているって聞いたけど、本当ですか?
MJ 当時はそう感じていたよ。(笑)
でも、僕がここで何を言おうと、この質問では問題になるよね。
次号の 『TV GUIDE』 で多分書かれちゃうよ。 「リサはもう二度と彼に会いたくないと言っていた」 ってね。
―― 2人は、今では友人同士なんですか?
MJ リサは可愛い人だよ。 彼女のことはとても好きだし、良き友人だよ。
明日のことなんて、誰にも判らないだろう? 彼女が今どう思っているかなんて判らないよ。 そう言うしかないもん。
彼女は、僕の家に来て子供に会ったり、電話で話したりとか、そんな感じだよ。
―― 自分はまた結婚すると思いますか?
MJ いいね。
―― 3回目の結婚はどうなるでしょう?
MJ 僕の心を撃ち抜かなきゃ。
「この人だ。 この人がそうなんだ」 って感じられないとね。
―― 二度の結婚でも、それぞれそんな風に感じたんですか?
MJ うん。 もちろん。
―― 今も、結婚していたら良かったなと思っていますか?
MJ そうだね。 そう思う。
ベストの選択をしなければならない。 起こってしまった事は起こってしまったんだ。 それは重んじなくっちゃね。


―― 親しい友人は誰ですか?
MJ エリザベス(・テイラー)だよ。
僕たち、毎週木曜には映画を観に行くんだ。
―― 普通の映画館に行くんですか?
MJ 僕としてはワーナー・ブラザーズのスタジオに行きたいんだけど、彼女が拒むんだ。
「駄目よ。あなたを連れ出すわ」 って。
だから僕たちは、映画館へ出歩いているんだ。 大体が空いてるよ。 だって殆んどの人は働いている時間だからね。
館内の係員が、「ワォ、さあどうぞ」 って入れてくれる。 で、映画代はタダ。 僕たちだけがね。(笑)


―― 子供について話しましょう。
最近の新聞によると、デビーはあなたの子供の母親ではなく、他の女性の卵子を使ったものだとか。 それから人工授精であるとも書かれていますが。
MJ 全くくだらない。 ゴミだよ。
事実じゃない。
―― 子供たちは、一緒にネバーランドに住んでいるの?
MJ 2週間前、子供たちはネバーランドにいたよ。
彼らは、初めてそれが自宅だと解ったんだ。 ホテルリゾートだと思ってたんだよ。 僕たちはどこに行ってもホテルに泊まっているからね。
まさか自分たちの為だけに汽車があるとは思ってないもんだから、「またネバーランドに出掛けたいな!」 だって。
―― 彼らの性格はどんな風ですか?
MJ プリンスは、いつも 「映画を創るよ」 って言うんだ。 だからビデオカメラを買い与えたよ。
「今度は何をするんだい?」 って訊くと、 「スターウォーズを撮る」 なんてね。 だもんで机にいくつか人形を置いて動かすんだ。
そしてパリスは、言葉が出てきて歩き始めたところなんだ。 彼女はとても可愛いんだよ。
それにしても、パリスが人形大好きってのには驚いたよ。 妹のジャネットは そういうのは好きじゃなかったし。 ジャネットは何しろおてんばだったからね。
パリスもそうなるのかなって何となく思ってたんだけど、違ったよ。
―― オムツを替えたり ご飯を食べさせたりしているんですか?
MJ そうだよ。
そういうのが好きなんだ。 いっぱいやらないとなんないけどね。
あらかじめ育児に関するあらゆる本を読んで、下準備を万端にしておいたんだ。 でも実際は、想像していたよりもはるかにエキサイティングだよ。
ただひとつ後悔しているのは、もっと早く出来れば良かったって事だね。
―― 彼らのために歌ったり踊ったりするんですか?
MJ 彼らが泣いている時には、そうやって静かにさせるんだ。
僕が踊りだせば、彼らは泣き止むんだよ。
―― もっと子供が欲しいですか?
MJ たしかにね。
僕は、父の記録に挑戦するんだと宣言したんだ。 父には10人も子供がいるんだから。
【※編集注- マイケルの1歳上のマーロンは双子で、その1人であるブランドンは生後まもなく亡くなっている。 マイケルは、いつでもブランドンの事も必ず兄弟の数に入れている】
―― 現在、父親との関係はどうですか? しばらく疎遠だったんですよね。
MJ 今まででベストの状態だね。
年月も経って、彼は本当に丸くなって、良い人になったと思うよ。
彼は単に、「どうしてる? きちんと食べているのか? それだけ知りたかったんだ」 って尋くんだ。 「契約書にサインしたかどうか?」 って事ではなくてね。 すてきな事だよ。
そして母は、相変わらず完璧な天使のような人だよ。


―― 41歳になり、幸せですか?
MJ 大体において幸せだな。
何をもってしても、僕をくじかせる事は出来ない。
僕は、小川の流れる音や 小鳥たちのさえずりを聴くのが好き。 そう、僕は全て、本物の自然が好きなんだ。
パーティやクラブには行かない。 子供の頃は行ったけど、もう気にもならない。
―― “世界の子供たちを救う” という願いが無くなったら敗北を認めて自殺するという、あなたの最近の言葉を読みました。
本当にそのように感じますか?
MJ いつもそう思うよ。
だって、それじゃあ何のために生きているか解らないだろ?
―― あなた自身のためでもなく、作品のためでもなく?
MJ 気にかけていないよ。
僕が創造する全てのものは、そのような純真なものによって起こされるんだから。
自然、それが全てなんだ。
そうなんだ。 つまり、そういう事なんだよ。

・・・ END ・・・

UPDATE - '08.04.07