【 LIFE誌 独占インタビュー '97 】
( 1997年12月号 )
― AT HOME WITH THE KING AS POP ―
( VOL.99 / Feb 1998 )

 ママはあんまり居ないし パパもよくツアーしてる! でも赤ちゃんはネバーランドに!
 そこで我がLIFE誌は、カリフォルニアの父親の地所に住む、この赤ちゃんの夢のような暮らしぶりを独占的に覗いてみよう。
 さあ! 9ヶ月のプリンス・マイケル・ジャクソンJr. に会おう!
写真: ハリー・ベンソン   本文: ディビッド・フレンド

 ダンス・スタジオ    彼がダンスなどを練習する場所。 パパは出世の相談役。
 「ここは、スポットライトへの最初のステップ」。
 マイケルは半分ジョークっぽく言う。 まるで暗示のように。
 プリンスは、オモチャのマイクを掴んで… そして、機敏に口の中へと押し込む。 「歯が生えているの」 と、近くにいた乳母が言う。 来年にはムーンウォークを始めるだろうか?
 パパは笑っている。 まるでおばあちゃんのような口ぶりで、
 「この子が健康で賢い子だったら、それだけで良いんだよ」。

 POP(マイケル)と この小さなプリンスは、一緒に食事を摂る。 お昼寝の時間も。
 「僕は、自分の声をテープに録ってあるんだ。 ポエムを読んでいる声をね。 僕が書いた詩だよ」
と、マイケルは言う。
 「コンサートで家にいない時は、乳母がそのテープをかけるんだ」。
 そのうちの1つがこれだ。
…それは星ではなく、
いちばんよく出来たソーラーシステムでもありません。
それに何万もの動物の生活でもありません。
神様が創り上げた いちばん素晴らしいもの、
それは子供です…
 子供部屋には、乳母が出たり入ったり。
 哺乳ビンや にぎにぎオモチャや テディベアが、アフリカンなアンティークの揺りかごを占領し、6つのぬいぐるみがプリンスのオモチャ箱に詰まっている。
 上には、ハンプティ・ダンプティのポスターと ミッキー&ミニーのモビール,それからパパのキルト。
 カウンターには、写真の入っていない5つの写真立て。
 「色々とたくさんの物を買ってやらなくても良いんだ」
と、マイケルは言う。 ファンがオモチャでも何でもくれるから。
 この子の隠れ家には、マイケル・ミルケン(ウォール街の大物)から贈られた赤いジュニア・ロードスター(車)や、腹話術師シャリー・ルイスから贈られた本物のラムチョップ人形(子供向け番組の人気キャラクター)まであるのだ。

 左上: ジュニア・ロードスター / 左下: シャリー・ルイスとラムチョップ人形
 右: 子供部屋の鏡台には、ピカピカの輝きを発しているミトン,ブーツ,そしてシルバーのスプーン。
    リッチで有名な人(=パパ)からの贈り物

 
 “プリンス” という名前は、マイケルの祖父と曽祖父から付けられたのだが、マイケルはたまにこの子を “Doo-Doo” と呼んだり “アップル・ヘッド” と呼んだりする。 (プリンスの顔がプクプクしていて22ポンド(≒10kg)も体重があるから)
 「初めて出てきた時は、僕の祖父や兄弟や姉ラトーヤと同じ頭の形をしていて、デビーと同じアゴの形をしてたよ」。

 マイケルは、ツアー中のためにラマーズ式のクラスに行かれなかったことを悔やんでいる。
 2月13日には 25時間かかった出産の間、デビーの手を握っていた。
 「僕は、同時に叫び声を上げながら祈っていたんだ」。
 この、父親となった事は、アーティストとしてのエネルギーを与えられたとマイケルは信じている。 彼は強調する。
 「他のどんなインスピレーションよりも、プリンスが産まれたという事が、僕に曲のアイデアを与えてくれる。
  人々は言う。 僕は正直じゃないって… 子供みたいな物を欲しがるから…。 でも、それは僕の宿命なんだ。 今まで知らなかった子供時代を償うためのね…」。


パパは、オシメ替えをしたり スプーンを手にせざるを得ない。
チキン味のおかゆをチュパチュパ食べこぼしているプリンス。

 
 君には、2人の乳母と3人のシェフ,それに子煩悩なパパがいる。 動物園のペットと2つの機関車,それに遊園地つきの庭。 それから、君の後見人エリザベス・テイラーとマコーレー・カルキンもだね。 君は愛を手に入れたんだ。
 一方、君のパパは、オシメを替える時にもピカピカ光る服と帽子を被り、そのプライベートは人々の注目の的だ。
 君のママは、君に会うために 時には地球を横断して通わなくちゃならない。
 君が有名人の子供としてママのお腹にいる時、彼女は何の敬意も受けていないんだ。 君のポップスターのパパは、君が人工受胎の賜物じゃないって事をマスコミに発表しなくちゃならない。
 地球へようこそ! プリンス・マイケル・ジョゼフ・ジャクソンJr.!

 Jackoランタンである 明るい目をした輝くプリンスがまだ歯の生えない口を開けて笑うと、その顔には生まれながらの善良さと気持ちの大きさが浮かぶ。
 でも今夜は、意地悪なフラッシュのせいで彼は “泣き虫くん” だ。 肌色の頬と少しカールした髪の坊やは少しの間 泣いていた。 ネバーランド・ヴァレーの白いユニフォームを着た乳母がガラガラを振っても、殆んど役には立たなかった。
 パパは、子供の顔の方へ細い指を鳴らしてみた。
 「子供が泣いたら、君が踊るといい。 すぐに泣き止むよ」。
 でもマイケルは、特にムーンウォークをする風でもなかった。 マイケルは
 「ほら、ほら」
と言って小さく歌を口ずさんでいた。
 「光る物なら何でも大好きなんだ」
と言うと、パパは飾りのついたジャケットを素早く着たけれど、プリンスは泣き続けていた。
 彼は9ヶ月だが、その泣き声はママ似のようだ。 本当に彼の泣き声ときたら、何だか少し悲鳴めいている。

 25部屋ある家のどこにもママは居ない。
 ゲームがあって、吹き抜けや部屋の隅に小物が積み重なっている家は、ティーンエイジャーが両親の休暇中に友達と留守番をしていて突然オヤが帰ってきて驚いた時のように、やりたい放題だ。
 アフリカ・ツアーから戻ってきた今、マイケルは子供とここネバーランドにいるけれど、デビーは150マイル南東のLAにいる。
 どうしてママが離れているのかと尋ねた時、マイケルは公表していない秘密のこと    そう、2人目の子供が出来たせいだと言った。 彼は嬉しそうに囁いた。
 「2人目が出来たんだ」。
 39歳のマイケルは、正確には核家族ではないという事をよく知っている。 コンサートのスケジュールのために遠距離結婚をしなくてはならなくて、それはとても大変だとマイケルは言っている。
 友達としてマイケルの子をもうけ、未だにベッドルームが1つのアパートを持つ38歳のデビー・ロウは、
 「家族としての時間を過ごすことが出来ないの… 全然」
と、TVのインタビューで認めている。
 「私はあそこに居なくてもいいの。 それは私の義務じゃないし、マイケルも解ってくれているわ。 私には自分自身の生活が必要だっていう事も、彼は解っているわ」。
 プリンスに何が必要かをいつも気にしているマイケルを見ていると、
 「私の出る幕は無いのよ」。

 マイケルのパートナーや親友,遊び友達の選択は、いつもいわゆる普通のものではなかった。
 彼はいつも、エリザベス・テイラーやカルキンのように、むかし子役スターだった人や 昨年('96年)別れた最初の妻リサ・マリー・プレスリーのようなスターの子供の中に、仲間を探していた。 彼は、少年少女と友達になった。 (立証されなかった'93年の児童虐待疑惑は、告発人である13歳の少年の家族との間で大金で和解し決着した)
 「有名人には、こんな事が起こるんだ」。
 その件に関してマイケルが言ったのは、これだけだった。 そして払いのけるように付け足した。
 「こんな恐ろしい事が起きたのは、僕が初めてじゃないんだ」。
 デビーは、あの告発について
 「私の子供をそんな世界に置きたくないわ。 たとえその話が本当かどうか疑わしいと思ったとしてもね」
と語っている。

 離れて暮らしていてもマイケルは、デビーの中に自分と同じ種の魂を見つけた。 つまり、ハーレーや動物を愛する自由な心。(彼女が飼っている犬に化学療法を施したと伝えるタブロイド紙もある)
 彼女とマイケルは皮膚科で出会い、そしてマイケルが皮膚の治療に通っている間、彼女はそこのアシスタントを務めていた。
 お互い友達同士になってからデビーは、子供を2回産みたいとマイケルに言い、マイケルはリサと離婚してそれを認めたことで彼女を驚かせた。
 彼らは昨年11月にオーストラリアの教会でひっそりと式を挙げ、2人の時を過ごした。 時にはマンガを見たり 道化のパフォーマンスを観たりした。
 「僕らは楽しく過ごしたよ。 そして子供が出来たんだ。 彼女は、僕の前にひょっこり現れたんだ」
と、マイケルは語っている。

 けれどもいま一度、4時間にわたるリサ・マリーとの写真撮影のことを思い出す。
 リサ・マリーのことを話す時、マイケルの声は早くなり震えさえする。 どんなに彼女が子供と楽しく過ごしているか,円満な離婚後もどんなに2人がまだ仲良くしているか…。 マイケルは、彼女を想い焦がれているようだ。
 「リサ・マリーは、僕とアフリカにいたんだ。 IMAXシアターに行って、サファリに出かけるシミュレーションをしたんだ。 食事をして、パラセイリングもした。 素晴らしかったよ」
と、マイケルは語る。
 デビーでさえも、マイケルがまだ彼女を好きなことを認めている。
 「マイケルは、彼女のことをとても気にしているけど、うまく行かなかったの。 それで困っていたのよ。
  彼はリサ・マリーをとても愛していたし、今でも愛しているのよ」。
 リサ・マリーが子供をいらないという気持ちを考え直さなかったのかと尋ねた時、マイケルは力説した。
 「その事を彼女は後悔しているよ。 そう彼女が言っていた」。
 リサは、まだその事を考えているのかな?
 「彼女に訊けば、そうだって言うと思うよ」
と、唇に指を当て、いたずらっぽく “シーッ” と言った。


当インタビュー翌年('98年)2月、ビバリーヒルズにてレストラン・ディナー帰り

 
 マイケルは、最近何が自分をハッピーにするかという事に話題を変えた。
 「子供,音楽を書くこと,そして映画を作ること」。
 6年前に映画化された “J.M.バリーのピーターパン” 『HOOK』 は、スティーブン・スピルバーグによってマイケルをキャステングするとマイケル自身も信じていたが、それは誤解だった。
 「6ヶ月間、僕は台本を読んで歌も書いたのに、がっかり。 本当にがっかりしたよ。 スティーブン・スピルバーグも、あとで間違いだったと認めてくれた。
  悩んじゃったよ。 僕は傷つけられた。 彼は僕のことをずいぶん調べたんだ。 でも、今でも友達だよ」
と、マイケルは語った。

 マイケルのいちばん怖いものは何?と訊くと、ツアー中の生活を続けることだと言う。
 「エンターテインメントは好きだけど、ツアーのシステムは好きじゃない。
  しょっちゅう時差ボケだから、ステージの上でも眠くなるんだよ。 殆んどいつも、自分がどこにいるのかも判らない。
  もうツアーはしないと思うよ」。

 とは言うものの、マイケルはジャクソンというのが付いた手袋を持っている。
 特に寝る時には、かすかにベビーフードの染みついたTシャツを着たプリンスを呼び寄せ、薄紫色のおしゃぶりを咥えさせ、腕の中で揺する。 子供は知らないうちに自分の小さなネバーランドを漂っている。
 数分後、マイケルは子供を乳母に手渡し、階下の自分のベッドルームへと静かに行く。

 マイケルのベッドルームに入る時、台座に置かれたボーイスカウトとイギリスの警帽を被った少女の実物大の人形がある。 2つの像は指で繋がっていて、部屋に入った人はその下をくぐらなくてはならない。 ドアの上には、対になっているロンドン橋がある。


マイケルのベッドルームへの入口にある “ウェルカム” のマネキン門

 
 部屋の中は、オモチャ・小説本が棚ごとに置かれてある。 マイケルのいちばん新しいグラミーのトロフィーが、暖炉の上で光っている。
 三面の壁にピーターパンの装飾が付いている。 その壁には凹みがあって、そこにセガ・サターンと Nintendo64が居座っている。
 「これ、全部できるんだよ」
と、マイケルが胸を張って言う。
 散らかっている物の中で最初に目立ったのは、赤と金の玉座だ。
 でも次にはマイケルのベッドを注目する。
 緑色の錦織の枕,ヘッドホン近くにそびえ立つ一対のステレオスピーカー。 枕の上には、シンプルな額に入ってはいるが赤い血を貫いた神聖なキリストの絵がある。


家主のベッドルームには、アニメ画やハイテクのオモチャがごちゃごちゃとある。

 
 そしてナイトスタンドの所には、額ぶちに入ったリサ・マリーの写真が置いてある。
 最近のスナップでも きちんとしたポートレートでもない。 見たところ、子供がしたような雑誌からの切り抜き。
 額ぶちの中の上目遣いの写真は、2倍に引き伸ばされている。 エルヴィス・プレスリーと その時わずか5歳だった娘の写真だ。
 「エルヴィスが僕たち(J5)のコンサートに初めて来た時、僕は初めてリサ・マリーに逢ったんだ。 それからずっと彼女のことは知っている」
と、マイケルは語る。

 でも、マイケルがベッドルームに入って眠りにつく前に最後に目にする物は、古いピーターパンのジオラマの隣にある プリンスのベビーベッドだ。
 今夜はそのベッドは空だけれど、中には動物のぬいぐるみがいっぱい詰まっている。
 そこは静寂の場… プリンスが彼のベッドを恋しがった時に用意されている場…。

・・・ END ・・・

UPDATE - '08.11.16