【 LIFE誌 インタビュー&レポート '93 】
( 1993年6月号 )
― MICHAEL IN WONDERLAND ―
( VOL.55 / Jul 1993 )
= 当時の会誌での前文より =
 
 サンタバーバラにある自宅・ネバーランドの模様を伝えた記事は数少ない。 これまで 『OFF THE WALL』誌,『Rolling Stone』誌など、ほんの数える程度…。
 そんな中で、今回の 『LIFE』誌が伝える内容は最も詳しく触れてあり、ファンにとってはワクワクもののお宅訪問。
 しかも、勿体なくもマイケル自身が邸内ツアーの案内人となってくれた上に、予定には無かった家の中の駆け足ツアーまでする気になってくれたという大サービス
 全文ノーカットの和訳でご紹介したいと思います。



ゲームセンター,オールド・スタイルの映画館,マイケル記念博物館。

 マイケルは、 『アラジン』 を6回観た。 彼はたくさんの子守歌を知っているが、テーマソングの "バーニィ" をまだマスターしていないからだ。 (♪「それを見るにはまだ早い。だからまだ起きないよ」♪)
 彼の好きなオモチャは
 「ビックリ箱・揺り木馬・ピーターパン ― ピーターパンの物なら何でも」
と語っている。

 マイケル・ジャクソンがプライベートのワンダーランドを計画した時、ピーターパンの世界のデザインを採用したのは当然のことだろう。 そこには空想的な彫像が点在し、原作者J.M.バリーの童話にある大人になることを拒否した子供に敬意を表している。
    その子供と 今34歳のポップ・スターは、似ていない訳ではない。 彼は名声を求めているうちに失ってしまった青春を取り戻そうと努力しているのだ。

 カリフォルニアのサンタバーバラ北の起伏に富んだ2,700エーカーの土地が、マイケルのネバーランド・ヴァレーである。 そこには個人の動物園,個人の鉄道,個人の大規模なアミューズメント・パークがある。
 ある特定の場所は立入禁止で、そこは2階建のチューダー様式の家で、マイケルのプライベートな住居である。
 しかしその他の場所は、随時訪れるゲストに開放されている。 例えばイリュージョニストのデビッド・カッパーフィールドや子役スターのマコーレー・カルキン等。 マイケルによると、
 「マコーレーは休暇の全部をここで過ごすんだ」
そうだ。

 今のところ、ネバーランドについての詳細を外部の人間が目にすることは無い。 バスでやって来る子供たちを除いては。
 彼らは末期の病人で、マイケルが招待しているのだ。
 この記事の中では、彼は10人の子供たちのツアーガイドをしている。 この子供たちはネバーランドの70人のフルタイムの従業員の子である。




そこら中に置かれた、鮮やかな花が描かれた手押しワゴン。
ゲストは、アイスクリーム,ソーダ,ピーナッツ,綿菓子を
好きなように手に取ることが出来る。

 「ここは僕のイメージのほぼそのままに、とっても素敵に出来上がったんだ」
 夕暮れの彼個人のアミューズメント・パークを見渡しながらマイケルは言う。
 「ローラーコースターもあるんだよ」。

 ここには、1ダースもの乗物がある。 それらが客をびっくりさせるのだ。 ハリウッドの大物たち、バリー・ディラーやディビッド・ゲフィンのような面々を。
 全ての乗物が、乗った人へ熱心に呪文を唱える。 “もう一回乗りたい?” と。
 観覧車は本格的な物で、ショールームに飾ってある物のようにピカピカのきれいな物だ。
 シードラゴン・ペンデュラム(左右に揺れる大きな振り子状の乗物)は、マイケルのヒットソングである "Remember The Time" のビートに乗って揺れる。
 ハーラム・スクラム・ジッパー(おっちょこちょいのジッパーの意)は、アメーバ状のカートに乗って、逆さになったりしてグルグル回る乗物である。

 巨大な樫の木がぐるりと囲む広場。
 その曲がりくねった枝には、小さな電球が飾りつけられている。 日暮れにはこのキラキラ光る木々が、別世界へと誘う。 観覧車の上からは下の並木が見え、まるで星の中に飛び出したかのような気分になるだろう。
 マイケルはこの牧場に1人でいる時、夜にはここに来て、乗物を次々と試し、星に手を伸ばしてみる。 本当だ。 彼は言う。
 「いつもやってるよ」
と。



ジュリー・アンドリュースの歌声が300の花壇から流れてくる。

 ネバーランド牧場の端々には音楽が隠されている。
 家の中では、マイケルがピアノを弾いていない時はディズニー映画のサウンド・トラックが流れている。
 家の外では、自作の “ロック” ミュージックが流れている。 それは、数百mごとに石に似せたスピーカーや植え込みに隠されたスピーカーから流れていた。



モンキー・ハウスにようこそ。
そして爬虫類センター,ダチョウ小屋,キリン舎,
手で触れる動物園へようこそ。

 マイケルの200匹を擁する動物園を見ると、町の動物園が小さく見える。
 特に印象的なのは、ここの居住者たち ワニ,キリン,アジア象(この3トンの象はエリザベス・テイラーからのプレゼント)が、よく管理されている事だ。
 小さな住人たち(60cmの高さの羊のライナス,体調80cmの雄馬のクリケット,太鼓腹の豚のペチュニア)は、完全にマイケル・ジャクソン育ちだ。 何しろ決して大きくならないのだから。

 ネバーランドには、アルパカからワラビーまで何でも揃っている。
 子供たちは特に、エキゾチックな動物のいる棟を気に入るようだ。 そこにはマドンナという名の体長3.5mのニシキヘビがいる。 その名をつけたのは悪意でもあっての事だろうか?
 「彼女がブロンドだからだよ。 でも、彼女に名前をつけたのは僕じゃないからね」
と、マイケルはいたずらっ子っぽく言った。


“マドンナ” は、体が白くて模様が黄色でお目々は赤い、かわいいヘビです


 訪問者たちは、よくネバーランドの外れにある自然センターにゴルフカートで出掛ける。
 黒と紫のカート ― ゴトゴトと敷地内を巡るのに使う1ダースある車のうち1台 ― に乗って、マイケルは言う。
 「これは、マコーレーが滞在中に乗る彼専用のカートでね。 色は 『ニンジャ・タートルズ』 から採ったんだ。
  いま僕たちがこれに乗ってるってことがバレたら、彼、きっと怒りまくるよ」。



ポップが創り出した場所。

 ピーッピーッという汽笛の音。 赤いキャンディのようなものがぼんやりと見える。
 すると突然、3台の客車が連結した列車が低木の間から現れた。
 それはマイケル・ジャクソンが、自分の牧場をシュッシュッポッポと走って廻るため用意したものだった。 豆電車は電飾で縁取られ、機関車の前にはミッキー有線放送を流すスピーカーが付けられている。

 マイケル・ジャクソンを取材するに当たって、キャプテン・アル=本取材の責任者は、いつも被っている帽子をこの日は脱いだ。 そうするといつも “うまく行く” ので。

 マイケルは我々にコンパニオンを付け、こう言ってきた。
 「これは30人乗りの列車で、僕は(先頭の)機関車に乗るよ。 これに乗れば、1時間でここを全て廻れるんだよ」。
 彼はこのネバーランドを創り出したことで、今まで以上に幸せそうだ。
 「僕は空想にふけるのが大好き。 1日の大半は空想に浸っているんだ」。

 マイケルの隠れ家は、ディズニーランドとサン・シメオンの中間の、裕福な隠遁生活を送るための典型的な場所にある。 これ以上の立地はないだろう。
 彼のサンタ・イネス・ヴァレーの牧場は4年前に,伝えられるところによると約30億円で購入された。
 ここは新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの不可侵の贅沢さと、ウォルト・ディズニーの魔法の王国の無邪気な精神とを併せ持っている。
 敷地内をマイケルと廻って身近に接していると、彼が自分の夢を実現させるために一生懸命に努力したことがよく解る。


'83年10月4日、この牧場に巡り会った "Say Say Say" のPV撮影がスタート


 最初の停車場はマイケルの裏庭で、ローズボウル・スタジアムと同じくらいの広さだ。 スペイン風の花壇はマリーゴールドで輝いている。 (40人の庭師たちがネバーランドの12万8千株の花を世話している)
 テラスからは、豊富な娯楽施設,プール,トランポリン等が見える。 遠くの方には澄んだ水の湖がきらめく。 岸には2台のジェットスキー,スワンボートが見える。
 マイケルは時々、湖の中ほどの小島に座って瞑想するという。

 その近くには、コイン不要の35台のビデオゲームがある二階建てのゲームセンター。 宇宙旅行の体感ゲーム機の周りのコンピューターのスクリーンには、流星群の爆発の様子が映っている。
 2階には古風な占いのコーナーがあり、1階には'53年型シェビー(車)にジュークボックスがセットされた物がある。 そこには、ビートルズや妹のジャネットのCDも収まっている。

 最初の停車場から少し戻った所に、2年前(※当時)にエリザベス・テイラーが結婚式を挙げたあずまやがある。
 「クリスマスの時、(DANGEROUSツアーで行っていた)日本から戻ってからの事なんだけど、エリザベスが家中の飾りつけをしておいてくれたんだ。 とっても素敵だったよ。
  僕は、誕生日とかクリスマスとか、それまで祝ったことが無かったんだ。 ただの一度もね。 いつもいつも仕事!だったから。
  僕がなぜネバーランドを求めるのか、解るでしょ?」。

 「ここでの僕のいちばんの思い出は、家いっぱいの坊主頭の子供たちを僕が迎えた夜のこと。
  その子たちはみんなガン患者で、中の1人のちっちゃな男の子が僕の方に来て、こう言ったんだ。 “今日が今まででいちばん最高の日だよ” って。
  みんな必死で泣くのを我慢したよ」。

 この思い出がマイケルをその気にさせたのか、彼は我々を家の中の駆け足ツアーに招待してくれた。
 梁天井の部屋,カントリーキッチン(カウンターの上にはスナック菓子,ネバーランドのロゴがアイシング(糖衣)で書かれたクッキー等の入ったいくつものバスケットがある),書斎。
 「僕はここに座って本を楽しむんだ」。
 彼はお気に入りの部屋について話した。 (最近読んだ本には、UFOについての本,連続殺人についての本,ふんだんにイラストを使ったピーターパンの本がある。)
 2階 ― ここではカメラ禁止 ― は、マイケルがディスプレイした子供向けの本の図書館,たくさんのアンティック・ドールのある寝室,すぐに出来るようきちんと一列にゲームが並べられたテーブルのある サンタのオモチャ工場以上のプレイルーム。

 マイケルは時おり歌を口ずさみながら、引き続き外でカートに乗ったり歩いたりして案内してくれた。 (彼は片方はオレンジ・もう片方は黄色のソックスを履いている。)
 厩舎,2面のバスケットコート,大きな枝から下がったたくさんのブランコを通り過ぎる。
 セキュリティー達は無線で穏やかにやり取り ― 「ブラボー・シックス(B-6の意)。動物園に向かいます。14時。」 ― をしてから、バンに乗って行ってしまった。

 きれいに掃除してある森の中の、円錐形テントのあるインディアンの村に来た。
 「時々、夜ここでキャンプ・ファイヤーをやるんだよ」。
 水の砦の上にあるオモチャの大砲を指さし、
 「あれはマコーレー・カルキンと僕とでデザインしたんだ」
と、マイケルはガムを噛みながら言った。

 ネバーランドの外辺部の丘の上で、牧場マネージャーのランス・ブラウン氏が語った。
 「たくさんの野生動物が生息しています。 コヨーテ,ヤマネコ,熊などが」。
 マイケルの親友ジョー・ウィルコッツ氏は、丘の上の家で窓から外を眺めていたら、1頭のピューマがジッと自分を見つめていたという出来事があったそう。

 最後の停車場は、40席ある映画館。
 そこには、望めばタダでもらえるキャンディ・コーナーがある。 館内には回転椅子に大きなオスカー像。
 後部の壁には2つのガラス張りの続き部屋があり、両方とも映写ブースの前にある。 それぞれの部屋には病院用のベッドがあり、スクリーンの方へ向けられている。 この部屋は、映画を座って観ることが出来ない重病の子供のためにある。
 これが、ネバーランドの本質である。
 オーナーにとって、この場所のポイントは娯楽ではない。 これがマイケルが自分の責任において創り出した世界    童話の世界のように安全で、清潔で、時間を超越した世界の本当の姿だ。
 実際、彼のグローバルな構想は、このプライベートな天国のように夢のある素晴らしいものだ。
 この秋にネバーランドで100ヶ国の子供たちを招待し、世界子供会議を開く計画を立てている。 子供基金 『Heal the World』 を設立し、子供のためのTV局を作る計画を発表することで、“全ての子供とともに” という彼の精神を広めるつもりなのだ。

 カリフォルニアの この場所に、着々とファンタジックな景色が出来つつある。
 ピーターパンというよりはハーメルンの笛吹きのマイケルは、そのことで “世界の助けを求める子供たちに手を差し伸べる” という、全体の計画もさらに進むと確信している。
 「新たなネバーランドを創る計画があるんだ。 まだ名前は付いていないけど」。
 青写真の段階だが、ここ以上のハイテクな乗物,バーチャル・リアリティなアトラクション等の大掛かりな、子供たちのための施設になるだろう。
 「ずっと素晴らしいものになるよ。 完璧な “喜びの村” になる。 世界はこうあるべきだと僕が思い描いてるようなものに」。


書かれた詩については MJ Writes 『MOMENTS WHEN ... '93』 参照

= 当時の会誌での後文より =
 
 オプラのトーク番組でマイケルが言った 「今は本当に幸せです」 との言葉を裏づけるような記事でしたね。 読んでいる私たちまでもがPTA的心境で安心したり幸せだったり。

 自分の夢のためには決して妥協せず、真摯な姿勢で1つ1つ着実に実現してゆくマイケルの姿は、より一層強く大きく優しさに満ちて見えます。 自分まで何かしら自信と勇気を与えてもらったような気がしませんか?
 私たち1人1人の力はゴマ粒くらいだけど、マイケルが今の幸せをずっとずっと続けられて、夢をもっともっと叶えられるためには、私たちファンは何をしたら良いのか・何が出来るのかを考えてみたいですね。 そうする事は、きっと自分自身の幸せになって回って来ると思うから。

 それにしても、子供に戻りたいと思いません? この歳じゃ作文だって応募出来やしない。
 ネバーランド牧場の世界子供会議がダメなら、象のシモの世話係でも良いんだけど!

・・・ END ・・・

UPDATE - '08.08.08