Interview誌 - A.ウォーホルとのインタビュー '82 】
( Oct 1982 )

( VOL.74 / Apr 1995 )
ご存知アンディ・ウォーホルによって描かれたマイケルが表紙を飾る
『Interview誌 '82年10月号』。
有名なので多くの人が内容を知っていると思いますが、会誌では初登場です。
マイケルの人柄の源ともいうべき、マイケルのいろんな事柄に対する考え方に
改めて触れてみましょう。



―― … インタビュアー(ボブ・コラセッロ)   W … アンディ・ウォーホル   MJ … マイケル
 '82年8月20日(金) 午後3:30、サンフェルナント・バレーの とある場所、ボブ・コラセッロはマイケルと家族が家の改装の間だけ借りているコンドミニアムに着いた。
 NYのアンディ・ウォーホルからのTELを待つ間に、マイケルはもう1人の親友ジェーン・フォンダについて話し始めた。
MJ ヘンリー・フォンダが亡くなった晩、僕はフォンダ一家と一緒に居たんだけど、みんな話をしたりニュースを観たりしているんだ。
ジェーンは、父親が亡くなったというのに僕の仕事を気にして、「まだ映画には出ないの?」 なんて訊いてきたりして… 優しい人だと思ったよ。
父親がもう長くは生きられないという事を前もって知っていたからだと思う。 何ヶ月も前に、いつかその日が来るって話していたんだ。
だから、泣いたり笑ったり食べ物をちょっとつまんだりして過ごせたんだ。

翌'83年、ジェーンは 『ワークアウト』 ("Wanna Be Startin' Somethin'"使用) のゴールド獲得・
マイケルはアルバム 『Thriller』 のダブル・プラチナ獲得を、CBSレコードから揃って表彰される
―― それで、今は何をしているの? 良い映画は見つかった?
MJ 『Thriller』 の編集を終えたばかりなんだ。 もうしばらくかかると思う。
同時に 『E.T.アルバム』 にもかかってるんだ。 新しい体験だったよ。
―― 『E.T.アルバム』 って?
MJ 2枚組のストーリーもので、僕はずっとナレーションをしているんだ。 僕が提案して、歌も入っているよ。 スティーブン(・スピルバーグ)と何度も会って話し合って作ったんだ。
―― 今回のアルバム(『Thriller』)では、君が全部曲を書いてるの?
MJ 4,5曲はね。
―― スティーブ(・ラベル)が言ってたんだけど、ポール・マッカートニーと何か作ったんだって?
MJ うん、ポールがこっちに来て、僕が書いた "The Girl Is Mine" っていうのを一緒に歌ってアルバムに入れたんだ。 1人の女の子を巡って争う歌なんだけど、よく出来てたよ。
彼のアルバム 『Tag Of War』 では2曲を一緒にやってるんだ。
僕の方の曲は僕が作ったんだけど、最後の方は会話になっててちょっと面白いよ。

―― 君はよくいろんな人と仕事をするけど、そうでない人もいるよね。
MJ そうかな。 そうでもないと思うけど。
―― ダイアナ・ロスともしてるよね。
MJ 特別な人だけだよ。
ダイアナは、僕にとって母でもあるし恋人でもあるし友達でもあるんだ。 素晴らしい人だよ。
彼女の次のシングル "Muscles" は、僕が書いてプロデュースして編集したんだ。
―― 詞も書いたの?
MJ 詞も曲もね。 今月の終わりには出るよ。
―― いつ曲を作るの?
MJ あれは飛行機の中。
ポール・マッカートニーのアルバムの仕事を終えて、イギリスからコンコルドで帰る時、この曲("Muscles")が急に閃いたんだ。
その時はテープレコーダーとか録音できるような物を何も持っていなかったんで、3時間ぐらい我慢しなくちゃならなかった。 で、家に着いてすぐテープに吹き込んだんだよ。

前年('81年) ダイアナの特別番組にゲスト出演、3曲を歌った

―― 君は、政治には全然興味は無いの?
MJ 政治のことを話すのは好きじゃないんだ。
―― ジェーン(・フォンダ)とも、そういった話は全然しないの?
MJ いや、するよ。
彼女は素晴らしい人だよ。 いろいろ学ぶ事も多いよ。
『Golden Pond』 の時も、ジェーンとキャビンで2人っきりで過ごしたんだ。 いろんな事を話したよ。 お互いとても勉強になった。
それこそ政治の話から、哲学・人種問題・ベトナム問題まで、何でもござれさ。
―― ずっと旅から旅という生活だろ。 教育はどこで受けてたの?
MJ 私立校へ行ったり、家庭教師が付いていたり。

―― インディアナ州ゲイリー出身だったよね。 そこでの生活はどうだった?
MJ すごく幼い時のことだから、あまり憶えていないんだ。
5歳の頃から歌ったりダンスをしてツアーに出ていたんだ。 いつも外出ばかりで学校へも行けなかったから、ほんの小さな事しか憶えていない。 角のお店とか、近所の人とか…。
僕らの家の裏にある高校には、トランペットやトロンボーン・ドラムも揃っているバンドがあって、それが通りを行進してくるんだ。 パレードみたいにね。 それが大好きだった。
憶えているのはそれぐらいかな。
―― 子供の頃からパフォーマンスするのは好きだったの? 嫌だと思ったことは無い?
MJ いつでも好きさ。 いつでもステージを楽しんでいるよ。
ステージの上はマジックだよ。 ステージの上に上がると、突然魔法にかかったようになって、自分で自分がコントロール出来なくなるんだ。
ローズボウルでのクインシー(・ジョーンズ)のコンサートの時は、僕はステージに上がりたくなかったんだ。 彼が僕をステージに呼んだ時、僕は頭を隠して人の後ろで "クインシーに見つかりませんように" って祈ってた。
でも結局ステージに上がらなくちゃならなくなって、そうなると魔法にかかってしまって、スピーカーやライトが集まったステージでワクワクしてしまうんだ。
―― 演じるのと、パフォーマンスする事とを比べると?
MJ どっちも大好きさ。 演じるのも最高だし、パフォーマンスするのも大好き。
自然に湧き出してくるものなんだ。 すべて感じるままに動いたら、君だってそうなるよ。
演じるっていうのは、別の人間になるっていう事でしょ。 素晴らしい事じゃないか。 自分を完全に無くしてしまえば、マジックが始まる。 そのマジックに予測できない何かすごい事を付け加えて創り上げていくのが大好きなんだ。
それが皆を驚かせるんだよ。 時代を先取りしている何かに、皆こう言うんだ。 「Whoa ! 思いもよらなかったよ」 ってね。 僕は、プレゼントや贈り物・ステージでのパフォーマンスや何かで人を驚かすのが大好きなんだ!



ジョン・トラボルタも好きだよ。
彼は 『Kotter Show』 から出てきたんだけど、誰も彼が踊ったりそういった事が出来るとは知らなかったんだ。
彼はちょっとしたブームだったよね。 ダンスが出来るって事が知られなかったら、どうなっていたか判らないよ。


―― 彼はそんなに乗り遅れちゃいないと思うけど。
MJ 解ってるよ。
彼は、台本やスタッフを選んだんだと思う。 誰だって、出来上がったイメージと闘うのはいつだって大変なんだよ。
―― どんな分野においてでも良いんだけど、突破口となったのは誰だと思う?
MJ スティーブン・スピルバーグも好きだよ。
ジェームス・ブラウンのように、観衆の心を掴んでしまう人を知らなかったよ。 観客の心を掴んでどこまでも引っ張っていくんだから、すごいよね。 彼は過小評価されてきたってずっと思ってたんだ。
サミー・デイビス・Jr.や フレッド・アステア,ジョージ・ルーカスも好きさ。
ジェーン・フォンダや キャサリン・ヘップバーンにはもう夢中だよ。
―― 『Golden Pond』 のセットで、キャサリンと一緒の写真を見たけど。
MJ 好き嫌いのはっきりしている人だから、彼女と知り合いになれて光栄に思うよ。
もし気に入らなかったら、会った途端にそう言われるんだ。 そんなような事をジェーンから聞かされていたから、最初にキャサリンと会った時は少し震えてたよ。 ちょっと怖かったんだ。
でもすぐに、僕をその日のディナーに招待してくれた。 その時から友達になったんだ。
彼女はコンサートというものに行ったことが無かったんだけど、僕らのマジソン・スクエア・ガーデンでのコンサートに来てくれて、とても楽しんでいったよ。
お互いに電話をかけ合うし、彼女は手紙もくれるよ。 本当に素晴らしい人なんだ。
NYの彼女の家を訪ねた時には、スペンサー・トレイシーのお気に入りの椅子やクローゼットの中の、彼の個人的なもの ―装身具なんかだけど― そんな物を見せてくれた。 スペンサー自身もマジックだと思うよ。
―― 昔の映画が好きなの?
MJ うん、芸術家だし、演技も監督も、物語も素晴らしいよ。
『Captains Courageous』 や 『Boys Town』,『Father Flanagan』,『Woman of Year』 なんかは資料があったんだけど、ちょっと非現実的だな。
―― 自分のことを書けばいいのに。
MJ ちょうど今取りかかっているところだよ。 夢中になってるんだ。 クインシーとスティーブンと僕とで、何か出来るはずだと思ってる。 スティーブンはミュージカルをやりたがってるんだけどね。

―― ブロードウェイに出てみたいとは思わない?
MJ うん、今はね。
技術を磨くには良い所だとは思うよ。才能を開花させるという意味でブロードウェイは最高だと思う。
どんどん突き進んで頂点に達したら、こう言うと思うんだ。 「今回は、僕の最高のパフォーマンスだった」 ってね。
でもその瞬間を記録したものが何も無いなんて、残念だと思わない? 偉大な役者やエンターテイナーがどんなに素晴らしいパフォーマンスをしても、その晩限りで何も残していないから、みんな失われてしまう。
フィルムに残しておけば、世界中の人々が永遠に観られるんだ。 スペンサー・トレイシーは 『Captains Courageous』 の中では永遠に若者だし、僕が彼の演技を観て刺激を受ける事だって出来るんだよ。
劇場でだけで消えて無くなってしまったものが沢山あるけど、僕がそういったエンターテイナーからどんなに沢山の事を学べるか、解る? 信じられない位だよ。
―― 今は殆んどのものがビデオで残っているけど、全部というわけにはいかないよね。
MJ そこなんだよ。
撮られてると思うと緊張して自然にはいかなくなるんだよ。 だからブロードウェイでやるのは嫌なんだ。 全てを見せたいんだよ。 記録して保管しておいて、全世界に配るんだ。

―― 人を楽しませたり喜ばせたりしたいっていう君の願望が、本当の動機のように思えるね。
名声やお金については、どう思ってる? 有名人ではない自分を想像できる? それから、有名で困ることってある?
MJ 静かにしていたいっていう時を除けば、困ることって無いよ。
例えば、今日は帽子をかぶってサングラスをしてる。 僕をわずらわせるものは何も無い。 映画を楽しむぞって映画館に行ってもみんなが自分を見ていて、クライマックスに 「サインをしてくれ」 って肩を叩かれると、ああもう逃げられないなって観念するんだ。
―― それで、スターが大勢住んでいるビバリーヒルズに居ないの?
MJ そう、スターを見に皆来るからね。
当時リフォーム工事中のエンシノの実家
―― 君はご両親ととっても親密だけど、ご両親もここに住んでるの?
MJ うん、今 母は階上にいるし、父はオフィスにいるよ。
―― 君の平均的な1日ってどんなの?
MJ ほとんど1日中 考えごとをしてるよ。
朝早く起きて、しなくちゃならない事の段取りをするんだ。 曲を書くとか、これからの事を計画するとか…
―― 将来に関しては、楽観的な方?
MJ うん、先の計画を立てるのは好きだよ。
―― ライザ・ミネリも友達の一人だよね。
MJ 忘れるわけないじゃない。 もう夢中だよ。 彼女のことはずっと好きでいると思うよ。 僕の好きな人のリストに加えておいてね。
電話でおしゃべりするんだけど、ショウの話をよくするよ。 そういう話が出来る。 好きなんだ。
僕のお気に入りのステップを彼女に見せて、彼女の好きなステップを僕に見せるんだ。 彼女もショウ・ストリッパーだよ。 本当のカリスマ性を持っている。 いつか彼女のビデオを撮らなくちゃ。
彼女のような人は、ラジオでも放送されて認められるべきだよ。 ステージの上の彼女はマジックさ。

―― ファッションには気を使う方?
MJ いや、ステージで着るものには気をつけるけどね。 普段着るものには気を使ってないよ。
どんなものが好きか判る? 何かの衣装とかコスチュームが好きなんだ。 それで鏡で見てるの。
バギーパンツやファンキーな靴や帽子、そんなものがぴったりなような気がするんだ。
面白いでしょ。
―― 毎日の暮らしの中でも演技をしているの?
MJ うん、そうしているのが好きだよ。 現実逃避だけど面白いんだ。 他のものや他の人になるのって素敵だよ。 特に自分が他の人になり切っていて演じている気がしない時にはね。
いつだって "演じている" っていう言葉は嫌いなんだ。 "僕は役者だ" って思うんだ。 実際にはそれ以上さ。 "演じている" のを越えなくちゃいけないんだ。
―― でもそんなに "演じている" のは、ちょっとアブナイような気がするんだけど。
MJ そんなことは無いよ。 それが大好きなんだもの。 忘れている事が好きなんだ。
―― どうしてそんなに忘れたいの? 君にとって現実はそんなにもハード?
MJ いいや、たぶん僕は、他人の人生に飛び込んで試してみるのが好きなだけだと思うよ。 チャーリー・チャップリンのようにね。
チャップリンも大好きなんだけど… 彼がスクリーンの上に描いたもの… 小さな放浪者・家財道具や荷物・持ち物全部・ハートまでも… 全て、あたりまえの事だったんだ。
ロンドンで産まれて、6歳の時にアル中の父親を亡くし、母親は精神病院に入っていた彼は、貧しくお腹を空かせてイギリスの街で物乞いをしながらふらついていたんだ。 それらの事の全てがスクリーンに映し出されている。
そういうのをしたいんだ。 現実から生まれてくるようなものをね。

―― お金儲けには興味ある?
MJ 自分のした事に対しての報酬は、公正に支払ってもらうようにしてるよ。
何かに取りかかったら僕は全身全霊を傾けてのめり込んでしまうんだから、当然さ。
食べるために働く、簡単なことだよ。
―― 本当にずっと休むことなく仕事してきたよね。
MJ ああ、本当に。
―― いくつだっけ?
MJ 23。
―― ずっと大人の世界で仕事をしてきて、子供時代が無かったと感じる時はある?
MJ 時々ね。
―― でも君は、自分より年上… つまり、いろいろ経験を積んできている人が好きなんだろう。
MJ 経験を積んでいる人や、素晴らしい才能のある人は大好きさ。 働き者で、精神的にも強く、それぞれの分野でリーダーとなっている人は大好き。
そういう人たちと会うと、学ぶところが多くてとても勉強になるんだけど、そういう人たちと会って話をすること自体がマジックなんだ。
一緒に仕事をした人の中では、スティーブン・スピルバーグが最高だね。
それから思いがけないだろうけど、落ち込んでいる時に子供たちの写真の載った本を見ると元気が出てくるんだ。 子供たちの周りにもマジックがあるんだよ。

―― 子供たちには何か特別な力があるんだろう。
たしか君は、動物もたくさん飼っているんだよね。
MJ 以前はね。
今は シカの赤ちゃんが2匹いるよ。男の子と女の子。 とっても可愛くて素敵なんだ。
―― シカを撃つなんて信じられないね。
MJ 全くだよね。
剥製とかのくだらない店は大っ嫌いさ。
あと、ラマや角のある雄羊みたいな羊も飼ってるよ。
ルイはサーカスから来たラマで、羊はMr.ティブス、小鹿がプリンスとプリンセスだよ。
―― 小鹿たちが大きくなったらどうするの?
MJ 庭に放すつもりだよ。 2エーカー(≒8,093.7㎡)あるからね。
―― 車は何に乗ってるの?
MJ ロールス・ロイス。 黒いのだよ。
―― 運転は好き?
MJ 運転したいなんて思ったことも無いよ。 両親は無理やりさせたけど…
クインシーも運転しないし… 運転しない人は沢山いるよ。
―― アンディ(・ウォーホル)もしないよね。
MJ しないのがスマートだよ。
でも、1人でちょっとそっちこっち行きたい時には便利だよね。 僕はあんまり出歩かないけど… 行く所もないし… 車に乗っても街を流すだけさ。
―― あんまり出歩かないの?
MJ ヘルス・フード・レストランの "Golden Temple" に行くぐらいかな。 ベジタリアンなんだ。
あと、アーケードに出掛けてゲームをやるよ。

―― 芸術には興味ある?
MJ 絵を描くのは好きだよ。 鉛筆やペンで描くんだ。


凡人には理解不能のよだれシリーズから写実的なイラストまで、画風は幅広い

芸術は好きだよ。
オランダやドイツやイギリスにツアーで出掛けると、美術館に行くんだ。 とっても大きな絵があるんだよ。 知ってる? とても描いたとは思えないよ。 驚いたよ。 とってもね。
彫刻や絵を見てると、自分がそのシーンの一部となって溶け込んでしまえるんだ。
芸術とは心に響くもので、俳優やパフォーマーも人に感動を与えられるものじゃないとならない。 人々の心に本当に触れることが出来れば、成し遂げようとしている物の一部となり一体となる事が出来るんだ。
僕は写実的なものが好きだよ。 人工的なものは好きじゃない。
みんな同じハートを持っているんだ。 だから 『E.T.』 がみんなに感動を与えるんだよ。 ピーターパンのように飛びたくない人がいる? 宇宙からの不思議な力で空を飛んで、宇宙人と友達になりたくない人なんている? スティーブンは人々の心にストレートに入ってくる。
僕は、人々の心に届くか心配しながらも、届くことを信じている。
―― 君は信心深い方だよね。
MJ うん、エホバや聖書、そこに書かれてある事すべてを信じているよ。 [※その後脱会している]
―― だから君はヒゲを剃らないんだって言われてるけど…
MJ 違うよ。 ヒゲが生えてこないんだもの。 剃ることないじゃない。
―― そう、君は基本的にクリスチャンなんだね。
MJ 心の底から信じているよ。
―― 聖書も読むの?
MJ うん、しょっちゅうね。
―― 教会へも?
MJ 僕らは "教会" とは言わずに "Kingdom Hall (王国会館)" と言うんだ。 エホバの証人だからね。
―― 明日、ベット・ミドラーに会うって言ってた? 何か一緒にやるのかい?
MJ いや、セス・リグスっていう人の所へ行くんだ。 (※ボイス・トレーナー)
ダンサーがウォーミングアップをするように、僕も歌を歌う時は喉を大きく開いておくんだよ。
―― ブレシング・クラス(呼吸法)のようなもの?
MJ そう、自分で練習していると彼が来るんだよ。 彼はいつも時間どおりなんだ。

【アンディ・ウォーホルがNYから電話をしてきた】
MJ はい。
W お、エキサイティングだね。
ウォークマンでいつも君の曲をかけてるよ。

前年'81年のTRIUMPHツアーのバックステージにて。 ウォーホルは2年後のVICTORYツアーも観覧
MJ 最近、ライザには会った?
W ああ、会ったよ。 ヨーロッパのホルストンのファッション・ショーで見かけたよ。
彼女、髪型を変えててね。 今の君みたいなんだ。 前髪をカールして、今までと全然違うんだけど とっても良いよ。 別人みたいだ。
先週末にホルストンを出て、今はNYにいるよ。 君の方はどう?
MJ 仕事で殆んどスタジオさ。
W 今夜、イギリスのロックグループのデュラン2 を観にリッツへ行くかもしれないんだけど、デュラン2 って知ってる?
MJ いいや。
W 先週はブロンディを観にメドーランドへ行ったんだ。
MJ どうだった?
W うん、良かったよ。 彼女は素敵だよ。 知ってる?
MJ いいや、会ったことは無いよ。
W よし、君がNYへ来たら紹介しよう。
ツアーって大変だよね。 ましてやワールド・ツアーとなると…
MJ ツアーはまぁ、何というか、一定のペースがあるし、でもステージに上がる事はマジックなんだ。
W 君が映画に出るのを待っていられないな。 話は無いの?
MJ 僕の部屋には、脚本や申し込みが積み上がってるよ。 良い話もあるよ。
でも、僕にはこんな一面もあるんだと思える役がやりたいだとか、一緒にこういう人とやりたいだとか 色々あって、全てに正しい選択をしたいんだよ。 間違いを犯したくないんだ。
W 何でもやったら良いじゃないか。 君に間違いなんてありえないよ。 君は本当に素晴らしいんだから。
ずっと歌手になりたいって思ってたの?
MJ 僕の思い出はいつも歌っている自分だから、特に歌手になりたいなんて思ったことは無いな。
W 相変わらずいろいろな衣装は集めてるの?
良いデザイナーは見つかったかい?
MJ 実際のところ、ステージ以外はダメだね。
集めているのは、いろいろなコスチュームや海賊のコートなんかだけさ。 そんなものは普段着ないしね。

中世王族・貴族系コスには '80s後半も引き続きハマり、日本・中国モノにまで着手
W 今、何を着てるの?
MJ ヒザに大きな穴の空いてるコーデュロイのパンツと、ピンクのシャツとネクタイ。
W よく外出する方? それとも家にいる方?
MJ 家にいるよ。
W どうして? 外にはいろいろ面白い事があるよ。 君がNYへ来たら、あちこち引っ張り回すとしよう。
MJ NYにいる時だけは外出したい気分になるよ。
W 映画は観に行く?
MJ うん、観るよ。
『E.T.』 のアルバムを作っているんだ。
E.T.と写真も撮ったんだ。 とっても良く撮れてるよ。 E.T.が僕を抱きしめているんだ。
W 『TRON』 は良いよ。 TVゲームみたいなんだ。 観た?
MJ うん、でもあまり感動しなかったな。
W ああ、じゃあまたね。
MJ うん、もしライザに会ったら、僕からよろしくと伝えておいてね。
【アンディ・ウォーホル、電話を切る】

―― ローリング・ストーンズは好き?
MJ うん、トイレで会ったよ。 キースと一緒だった。
キース・ムーンだっけ?
―― キース・リチャーズ。
MJ ああ、そう。 キース・リチャーズ。
僕があとから入っていって 「やあ」 と言って、少し話をしたんだ。 それだけだよ。

ミック・ジャガーとは それから2年と経たない間に "State Of Shock" で共演することとなる
―― 本はたくさん読むの?
MJ うん、読書は好きだよ。 哲学や短編が好き。 最新のベストセラーは読むようにしてるよ。
LAタイムズの日曜版の "The Calendar" は好きな新聞だよ。 あちこちで何が起きているかを伝えているんだ。
好きな作家もいるよ。 ベストセラーになるような本を書いてる人ではないけどね。
今、何が流行っているのかは興味あるんだ。 今は身体に関係ある事だね。
―― エクササイズはしてるの?
MJ 毎週日曜は、休みなしで30分間ダンスしてる。 とっても楽しいよ。
―― どうして日曜なの?
MJ 自分で選んだんだ。 日曜日はものを食べないからね。 ジュース以外は何も摂らないんだ。
―― どうしてそんな事をするの?
MJ 身体の組織をきれいにするんだ。 素晴らしいと思うよ。
正しい方法でやれば身体には良いことなんだ。 身体の中を修繕するんだよ。 自分の身体の外側を清潔にするように、内側もきれいにしなくちゃ。
にきびや病気として出てくる身体の中に溜まった不純物を出すんだよ。 毒素が出ようとするんだ。 身体の中もきれいにしなくちゃね。
―― 新聞の記事は、じっくり読まないの?
MJ うん、目には入ってるかもしれないけど、読まないよ。
―― それはやっぱり、かなり気が滅入ってしまうから?
MJ うん、昔からちっとも変わらない。
僕は人を幸せな気分にさせるのが好きなんだ。 それはショービジネスの世界でも大切なこと。
現実逃避っていうのかな。 5ドルでチケットを手に入れて席に着けば、別の世界なんだ。 現実に抱えている問題を忘れるんだよ。 素晴らしいじゃないか。
人を楽しませ、慰めるマジックなんだよ。

・・・ END ・・・

UPDATE - '07.11.16