【 EBONY誌 インタビュー 】
( 1992.5 )

( VOL.44 / Jun 1992 )

1984年以来8年ぶりにインタビューに応じたマイケルの生の声をどーぞ!



―― … インタビュアー   MJ … マイケル
(1992年2月 アフリカにて)

―― 今回のアフリカ旅行の感想は?(※ 2/11~19、アフリカ数ヶ国を訪問)
MJ 僕にとっての「文明の曙」ってとこかな。
ここは、社会というものが最初にあらわれた場所で、愛に溢れた場所なんだ。僕はそれらの結びつきこそが全てのリズムのルーツなんだと思うよ。全ての故郷なんだよ、ここは。


―― 1974年にもアフリカに来ていますね。
MJ 今回はもっといろんなことを知った。人々と生活の様子、彼らの政治のことなんかを。
でも、僕にとって重要なのは、リズムと音楽と人々について より多くのことを知ったことだ。
本当にいろんなことに気がついた。リズムってすごい!
特に子供たちの動き。小さな赤ちゃんでさえ、ドラムの音が聴こえると動き出すんだもの。リズムが彼らの魂を刺激し、彼らは動き出すんだ。
アメリカの黒人のも同じことが言えるね。


―― 本物の「キング」になった感想は?
MJ あまり深く考えないようにしてる。わがままな人間になりたくないからね。
もちろん名誉なことだと思ってるよ。



西アフリカ・クリンジャボ王国にて "King Of Sani" の称号を公式授与

―― 音楽とリズムについて話しましたけど、今回のアルバムに何故ゴスペルを取り入れたんですか?
MJ 『Will You Be There』は、僕の家― カリフォルニアのネバーランドで書いたんだ。
その事については考えたことが無かったなァ。
僕の書いた歌が僕の力とは言い難いな。いつも天啓を受けるだけなんだから。僕は幸運にも音楽の流れ出る道具になれるんだ。
僕の力じゃない。神様のおかげなんだ。神様が僕をメッセンジャーに使って下さるんだ。
―― 『DANGEROUS』のコンセプトは?
MJ このアルバムがチャイコフスキーの『組曲くるみ割り人形』みたいになったらいいなって思う。あれは百年も昔から今まで人々に愛され続けてるでしょ? 何か不変なものがあるんだよ。
子供たち・若者・その親たち・全ての人種・全ての国の人たちに何百年もずっと、このアルバムの曲を1つ1つ吟味してほしい。


―― この旅行は、あなたが子供たちの為にいろいろな援助をするためのものだという事に気づきましたよ。
MJ 僕は子供たちが大好き。そう、あなたの言うとおりだよ。
それから赤ちゃんも大好き。
―― それに動物も。
MJ そうだよ。動物や子供たちは僕にクリエイティブな活力や力を与えてくれる。調和を図るために大人になると失くしてしまうようなものを。
こんな詩があるよ。
「わたしは子供たちを見ると、神様が我々人間をまだお見捨てになっていないことがわかる」。
インドの詩人・タゴールの作品だよ。
子供たちの純粋さは僕にとって無限の創造力なんだ。それは人間の潜在能力そのものなんだよ。
でも、時が経てば、人は大人になる。なってしまうんだ。そうなればその能力は消えてしまう。
愛。子供たちはひたすら愛する。つまらない噂話をしたり、不平不満を言ったりしない。彼らはただ素直に心を開いている。誰にでも。彼らは人を非難したり、人を色眼鏡で見たりしない。
本当に無邪気なんだ。
大人にとってこれは重大なことだ。大人たちはその無邪気さを失ってしまったんだから。
インスピレーションって大切だよね。クリエイティブな仕事、作曲したり…彫刻家や詩人・小説家にとって、とても大事なものだ。
同じ純粋さのことなんだよ。人はそういったものから創造力を得るんだ。
子供たちにはそれがある。動物や子供たち・自然から力が与えられるのが僕にはわかる。
ステージで観客と与え与えられる そういったやり取りが無ければ、僕はパフォーマンスなんて出来ないよ。
誰にでも出来ることだ。だって僕がパフォーマンスを止めたりすると、彼らは僕にすごいエネルギーを送ってくるよ。僕はそのエネルギーでパフォーマンスするんだ。


タンザニアにて

―― そうしたことにはどんな意味があると思いますか?
MJ 僕は、神様がお選びになった人々がそういったことが出来るんだと信じてる。
ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチやモーツァルト、モハメッド・アリやキング牧師がそうだったように。彼らには与えられた使命があったんだ。
僕は、自分が生まれてきた本当の目的をまだあまり解っていないんだと思う。
僕には芸術が委ねられた。芸術の最終ゴールは、肉体と精神を結びつけること・人と神を結びつけることにあると思う。芸術の存在理由はそこにあるんだ。
僕がやっていることもそう。音楽を生み出す道具になれて幸せだと思ってる。
僕らの今生きているこの世界は大きくて、壮大で、素晴らしいオーケストラだってつくづく思う。全ての創造の基本は、音(サウンド)だ。適当な音じゃなくって、音楽(ミュージック)のことだよ。
歌の常套句を知ってる? そう、決まり文句のこと。
ゴスペルにあるじゃない。「主は土の塵より人を造り、その鼻に生命の息吹を吹き入れられた。そこで人は生きたものになった」(注: 聖書『天地創造』より)って。
僕の生命の息吹は、生命の音楽。それは隅々まで染み渡ってる。
アルバム『DANGEROUS』の中で、僕はこう言っている。「僕の血をたぎらせる色々な“時”の歌。潮が満ちるリズムでダンスする」(注: 『PLANET EARTH』より)。
当たり前の表現だけど、僕の遺伝子に組み込まれた音感や生態リズムは、それと同様に星の運行をも左右するってことを言いたいんだ。季節の移り変わりのリズム・僕らの心臓の鼓動・鳥の渡り・潮の満ち引き・成長の過程・進化・そして滅亡も。
これが音楽。リズムなんだよ。
僕の音楽の最終ゴールは、僕に幸運にも贈られたものを世界に与えること。僕の音楽とダンスで神の喜びを与えること。
きっとそれが僕の目的なんだ。僕が生まれてきたことの。


―― 政治についてどう思っていますか?
MJ 政治に関わるつもりは無いよ。
でも、音楽には暴力的な気分を鎮める力があると思う。監視カメラ付の牢屋に音楽を流してごらんよ。きっと囚人たちがダンスしだすのが見られると思うよ。魂を刺激されるんだ。
僕はどんな時にでも音楽を聴く。
(間)
この8年、ずっと言ってきたことだけど… 僕はインタビューには応じない。
でも僕はあなたを知っているし信頼してる。僕が信用してインタビューに応じてもいいなって思うのは、あなた1人だけだよ。

・・・ END ・・・

UPDATE - '08.10.07